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ゆきぐにのはる

雪国の春

柳田 国男

線上閱讀柳田 国男《雪国の春(ゆきぐにのはる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 136,000 字 · 266 頁

青空文庫

つまりはコタツ火鉢の類が少なくて、火を取るべき場合がまれであったのである。十能は奥羽と九州ではヒカキまたはヒトリといい、他の中央部の大区域ではセンバと呼んでいる。センバも十能もやはりコタツと同様に、その語の根原が自分にはまだわからぬが、とにかくに古い道具でなかった証拠には、これまた今一つ以前の固有日本語の、これに該当するものがないのである。

火カキというにいたった理由だけはほぼ明白である。すなわち今ある長火鉢の灰ならしと同じで、夜分囲炉裏の火をいけるために灰を掻き上げる器を、時おりは火種を運ぶのに兼用していたまでであったことは、あの格好からでも容易に想像することができる。それが台十能などという特別の形式を供えるに至ったのは、もちろん木炭の製法が普及してから後の事で、その木炭はまたつい近年まで、多くの田舎の家庭においては、わざわざ製造せねばならぬ必要を認めなかったものである。

センバが多くの雪国において珍重せられたのは、考えてみれば深い仔細があった。これは大事な賓客のために、特に奥座敷の雨戸を明け放すのと同じ趣旨で、炉の火を取り分けて別に一席を設けることは、日常普通の訪問者に対しては、決してせぬ習いであったからである。