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ゆきぐにのはる
雪国の春
柳田 国男
線上閱讀柳田 国男《雪国の春(ゆきぐにのはる)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 136,000 字 · 266 頁
であろう。大学で聞いたのでないから確かではないが、東京のごとき集合地に久しくいて見ると、首府以外の地で使うのが方言だと、簡単にきめてもしまわれぬようである。しからば古い形に最も近いものとか、または最も多数の人に用いられる形とか、どういってみた所がそうたやすく、標準語が見出されるものではない。早い話が「然り」に該当する京都のヘーが、九州のある地域のエーだのネーだのあるいは北東日本の、ハイだのアだのを排擠して、標準となるだけの資格がどこにあるだろうか。
それにもかかわらず、はたして単純なる大胆さの結果かどうか。地方の教育者の方言蒐集は、常にいわゆる匡正を目的としておった。幸いに成功はしなかったが、これによっていい加減乏しい国語の数と、言い現わし方の種類とを削減しようとした。しかも最も耳につく発音法や抑揚にはその力が及ばなかったのである。かりに方言匡正家のいわゆる標準語を繋ぎ合わせて、物を言ってみたらいかがであろうか。まるで書物で日本語を稽古した外国人のような感を、与えずしてやまぬではあるまいか。同化の力としてはおそらくは文学が最も有力であったろうが、その文人とてもやはり多数の東京人とともに、漠たる見当に向かって絶えずわが言葉を矯正しつつある、田舎出の諸君ではなかったか。