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ひだのかいだん
飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選
岡本 綺堂
線上閱讀岡本 綺堂《飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選(ひだのかいだん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 130,271 字 · 263 頁
他面白くもない、好加減に馬鹿にしろと、彼女は持前の侠肌を発揮して、奮然袂を払って起った。
が、お葉も流石に彼のお杉婆に対しては、何となく不気味の感が無いでもなかった。窟の奥から窃と抜け出して、先ず表の有様を偸み視ると、夜は既う更けたらしい、山霧は雨となって細かに降っている。お杉は消えかかる焚火を前にして、傍の岩に痩せた身体を凭せかけたまま、さながら無言の行とでも云いそうな形で晏然と坐っていた。生きているのか、死んでいるのか、眠っているのか、起きているのか、一向に見当が付かない。
捉まったら其れまでと度胸を据えて、お葉は抜足をして外へ出た。お杉婆は身動きも為なかった。お葉は折柄の雨を凌ぐ為に、有合う獣の皮を頭から引被って、口には日頃信ずる御祖師様の題目を唱えながら、跫音を偸んで忍び出た。
それから一時間も過ぎた後に、重太郎が帰って来た、山※(「けものへん+操のつくり」、第4水準2-80-51)も帰って来た。彼等は山蔦で引縛った角川安行を抱えていた。
「阿母さん、阿母さん。」
重太郎が呼んでもお杉は答えなかった。重太郎は先ず窟の奥へ駈け込んだが、霎時して狂気の如く飛んで来た。