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こくしかんさつじんじけん
黒死館殺人事件
小栗 虫太郎
線上閱讀小栗 虫太郎《黒死館殺人事件(こくしかんさつじんじけん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 296,741 字 · 584 頁
この尨大な館もあの男にとると、たかが『影と記号で出来た倉』にすぎないのだ。まるで天体みたいに、多くの標章を打ち撒けておいて、その類推と総合とで、ある一つの恐ろしいものを暗示しようとしている。だから、そういう霧を中に置いて事件を眺めたところで、どうして何が判ってくるもんか。あの得体の知れない性格は、あくまでも究明せんけりゃならんよ」
その最終の到達点というのが、黙示図の知られてない半葉を意味していると云うことも……また、その一点に集注されてゆく網流の一つでもと、いかに彼が心中喘ぎ苛立って捜し求めているか、十分想像に難くないのであった。しかし、扉を開くと、そこには人影はなかったけれど、法水は眼の眩むような感覚に打たれた。四方の壁面は、ゴンダルド風の羽目で区切られていて、壁面の上層には囲繞式の採光層が作られ、そこに並んでいる、イオニア式の女像柱が、天井の迫持を頭上で支えている。そして、採光層から入る光線は、「ダナエの金雨受胎」を黙示録の二十四人長老で囲んでいる天井画に、なんとも云えぬ神々しい生動を与えているのだった。なお床に、チュイルレー式の組字をつけた書室家具が置かれてあるところと云い、また全体の基調色として、乳白大理石と焦褐色の対比を択んだところと云い、そのすべてが、とうてい日本においては片影すら望むこと