Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
Read 娘煙術師 (むすめえんじゅつし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 267,766 characters · 530 screens
季節おくれの牡丹桜
が、その次の瞬間には、笑殺的な冷やかな光が、涙のように濡れて見えた。
「お狂言師の嘉門様は、はいはい名人でござりますとも。祝賀物をやらせても、鬼神天狗物をやらせても、片輪、いたずら、悪気のない物、争い物をやらせても、僧侶物から遊興物、婿取り物から夫婦物、盗人物から悪人物、何から何までやらせても、いつも名人でござりますよ。……それほどの名人の泉嘉門だ! 誰だ! 嫌って排斥するのは! ……ハッハッハッ、怒ってはいけない。浮世はこうしたものだからなあ。ともかく盃をいただきましょう」
盃を取り上げると口へ持って来た。で、キューッと飲み干したが、手酌でドクドクとつぎ出した。たてつづけに嘉門は酒をあおる。とカラリと盃を投げたが、フラフラと立ち上がると縁へ出て、庭下駄をはくと庭へ出た。
季節おくれの牡丹桜
庭へ下り立ったお狂言師の嘉門は、したたかに酒に酔っているがために、歩く足どりが定まらない。ヒョロヒョロヒョロヒョロとよろめくのである。そういうあぶなっかしい足どりで、あてなしに庭を歩いて行く。
「草や木ばかりを見てさえいれば、不平も不満も起こらないのだが、活きて浮世に暮らしているからには、やはり人間を見なければならない。