Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

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むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

Read 娘煙術師 (むすめえんじゅつし) by 国枝 史郎 (くにえだしろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 267,766 characters · 530 screens

Aozora Bunko

悶えの処女

――で、不安そうにのぞき込んだ。

「まあまあ何をおっしゃいますことやら」お菊は呆れたというように、眼を張って左内の顔を見たが、「おからかいなさるものではござりませぬよ」

「なんのからかいなどいたしましょう。真面目に申し上げておりますので」左内の声は真剣であった。

「あなたにお逢いをいたしましてからは、私の心と申しますものは、重荷悪尉の主だといわれる、山科荘園の幽霊のように、恋の重荷に堪えられずに、嘆いたり恨んだり迷ったり、焦れているのでござりますよ。で、おそらくは私の顔は、重荷悪尉の面のように醜く凄くいやらしいものと、変り果てたものと存ぜられますよ」

で、お菊を呪うように見た。

悶えの処女

左内から恋の告白をされて、お菊は眼もとを赫らめたが、物もいわずにうつむいて、膝の上で両手を握りしめた。

お狂言師の嘉門の家へ、北条左内が内々ではあったが贄を入れて弟子となったのは、この日から半年ほどの以前のことで、嘉門の芸風が独特であって、人柄にもりっぱなところがあると、人の噂に聞いたからであった。そうして入門をした北条左内は、嘉門の芸風や人柄については、もちろん感心はしたけれど、娘のお菊を見るに及んで、すっかり捉えられ魅せられてしまった。