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あくまのもんしょう
悪魔の紋章
江戸川 乱歩
Read 悪魔の紋章 (あくまのもんしょう) by 江戸川 乱歩 (えどがわらんぽ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 151,280 characters · 301 screens
「お前、今朝ここを掃除したんだね。この窓の下にこんなものが落ちてたんだが」
女中が顔を出すと、川手氏は叱りつけるように聞きただした。
「イイエ、アノ、わたくし、十分注意して掃除しましたけれど、何も落ちてなんかいませんでございました」
「確かかね」
「エエ、本当に何も……」
若い女中は、いかめしい二人の客の姿におびえて、頬を赤らめながら、しかし、キッパリと答えた。
「誰かが、窓の外から投げ込んで行ったのではありませんか」
中村警部が不安らしく瞬きしながら云った。
「イヤ、そんな筈はありません。ごらんの通りこちら側の窓は閉め切ってあります。封筒をさし入れるような隙間もありません。それに、この外は内庭ですから、家のものしか通ることは出来ないのです」
川手氏は魔術でも見たように、脅え切っていた。
「封筒がここへ入って来た経路は兎も角として、中を改めて見ようじゃありませんか」
宗像博士は一人冷静であった。
「お調べ下さい」
川手氏は、自ら開封する勇気がなく、封筒を博士の方へさし出した。博士は受取って、注意深く封を開き、一枚の用紙を拡げた。
「オヤ、これは何の意味でしょう」