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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
Read 新編忠臣蔵 (しんぺんちゅうしんぐら) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 337,181 characters · 676 screens
相生町二丁目の前原伊助の米屋五兵衛を初め、与五郎の小間物屋善兵衛、その手代や奉公人となっている岡野金右衛門、倉橋伝助。
その他。
医者、剣客、茶人、日雇、その時折の商人などに身を変え、名を変えて、五十余名の者が、あらゆる知己や機会をたどって、吉良方の微細な事でも聞き洩らすまいと、松坂町の塀囲いに、耳目をあつめている折なのだ。
――矢頭右衛門七は、塀際の溝のふちから、椎の木を仰いで、
『いっそ、中へ忍び込んで』
とも考えたが、
『いや万一』
と、その失策が、自分だけに止まらない事を考えて、ただ空しく、お粂の云った約束事を恃みに、
『――神も憐れませたまえ』
と、同志みんなの気持になって、吉左右を心に念じているほかなかった。
すると――、
ばさっと椎の木の葉を、一、二枚落して、右衛門七のうしろの方へ、ころころと小石が落ちた。
『あッ、お粂の。……さてはうまく行ったな』
彼も又すぐ、小石を拾って、ぽんと椎の梢へ投げた。
その合図に、見当をつけたのであろう。塀の内側からお粂が一枚の板絵図を抛った。墨壺の墨で大工が板へ引いた間取図面である。――からんと、それは溝の石垣の角に落ちて刎ね返ると、二つに割れてしまった。