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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
Read 新編忠臣蔵 (しんぺんちゅうしんぐら) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 337,181 characters · 676 screens
水裃
水裃
大目付荘田下総守を大検使として、副使多門伝八郎、大久保権右衛門の三名は、介錯人、その他十人を従えて、
『御免』
と、真っ直に、大書院まで通った。
右京太夫は、挨拶に出て、
『用意は、整いました』
と、云う。
『さらば――』
大検使以下の者は、すぐ、その場所へ行ってみた。――白い幕が、黄昏の庭に揺らいでいた。畳三枚に、毛氈が敷いてある。
『これは、腑に落ちぬ御用意……』
と、検使の伝八郎は、眉をひそめた。
彼は先刻、殿中で直諫した為、謹慎を命じられていたのであるが、当番役ではあるし、初めから吟味にも当っていたので、譴責を解かれて、副使として臨んだのであった。
『右京太夫どの』
『はっ』
『今日のお預け人は、一城の主でござるぞ。官位を召し上げられた訳ではなく、武士道のお仕置を仰せつけられた者、それを下人同様、庭先に於て、切腹させるお心得か』
『はっ……』
『武門の作法にあるまじき扱いと思う。御所存があらば、承わりたい』
極めつけると、
『あいや――』
と、下総守が横から引き取って云った。
『庭先でも差つかえござるまい』
『なぜ?』
怫然と、伝八郎が、問い詰めると、
『大検使たる此方が、差つかえなしと申すからには、無用な贅言、お控えなさい』