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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
Read 新編忠臣蔵 (しんぺんちゅうしんぐら) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 337,181 characters · 676 screens
『又、吉良の邸の出入を』
『すべて、そっちの方は、拙者がひきうけた。貴公はすぐ石町へ』
『じゃあ頼む』
源吾は、すぐ去った。
戸締りして、その後から、安兵衛も忙しげに林町の隠れ家を出て行った。
彼方此方に、各※(二の字点、1-2-22)、枚をふくんで潜伏している同志たちは、この一日、曾てない緊張を示して、石町の本拠から、
(準備!)
の檄が飛んでくるのを、待ち暮していた。
だが、四日の日は、何の沙汰もない。
同志間の往来もなかった。
各※(二の字点、1-2-22)が、いるところから寸地も離れなかったからである。万一、他出しているうちにでも、突然、蹶起するような事にでもなれば、一挙の統制を欠くばかりでなく、出おくれては一期の恥辱にもなる。
五日の朝――
その日は、寒々と細い糠雨が降っていた。
林町の安兵衛と聯絡を取って、神崎与五郎は、蓑笠を身に纒って、
『よし、おれが、見極める』
と、吉良邸のある松坂町附近を、雨にぬれながら見張についていた。
この界隈は、彼には危険地帯であった。ついにこの秋まで、吉良の裏門前で、小間物屋善兵衛として暖簾をかけて坐っていた縁故があるので、顔見知りの者が多いからである。