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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
Read 新編忠臣蔵 (しんぺんちゅうしんぐら) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 337,181 characters · 676 screens
他の三藩の者もみな同様だった。腹は減るし、寒さは迫るし、夜の更けるほど、雨は数日の雪を真っ黒に降り流す。
暗い邸外から眺めると、塀の内には、無数の灯が燈され、雨の縞が空に光って見えた。
『余りといえば、吾々を無視しておる。仙石家では一体、何をこう手間取っているのか、御催促申してみては何うか』
不平の声が起るのも無理ではない。いくら被いを覆けていても、提灯の灯が持ちかねるほど雨風は横なぐりに吹きすさぶ。
――と、細川家の小姓頭平野九郎右衛門が、
『まあ、まあ、我慢してくれい。今、仙石家の者へそっと訊ねてみたところ、予定の時刻より遅れたわけは、伯耆守様のお計らいだそうだ』
宥めるつもりで、一同の中へ来てこう云うと、
『じゃあ、わざと時刻を遅らしているのか』
色を作して、かえって不平の声は、昂ぶりかける。
『そうだ、わざとなのだ。――だが、伯耆守様のお気持を伝え聞くと、拙者はかえって欣しくなった。――と云うのは、このお邸へ入った四十六名の赤穂浪人が、ふたたびこの世で一緒に顔を見合せることはもうないかも知れん。御処分の日はまだ先の事にしても、今夜限りで、四家へ分れ分れにお預けになってしまう身上だ。