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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Read 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 240,656 characters · 478 screens
「ちえッ。のぼせていやがらあ」
聞いて、つッかけ草履の江戸ッ児がっているのが、うしろの連れをふりかえりながら悲憤糠慨して言った。
「きいたか。金の字! 真夫だとよ。あの御面相できいて呆れらあ。当節の女はつけ上がっていけねえよ」
その出会いがしらに、にょっきりとそこの町角から降って湧いたように姿を見せたは、傷の早乙女主水之介です。ちらりと認めてつッかけ草履がおどろいたように言いました。
「おい。金的! 見ねえ! 見ねえ! 長割下水のお殿様だ。傷の御前様が御帰りだぜ」
「違げえねえ。相変らずのっしのっしと頼もしい恰好をしていらっしゃるな。京へ上ったとかエゾへ下ったとかいろいろの噂があったが、もう御帰りになったと見えるな。六月前までや毎晩ここでお目にかかった御殿様だ。急に五丁町が活気づいて来やがったね」
言う下から、あちらの街々、こちらの街々に、勃然として活気づいたその声が揚がりました。
「ま! 見なんし! 見なんし! 豆菊さん! 蝶々さん! お半さん! 殿様が御帰りでござんす! 早乙女の御前様が御帰りでありんすよ!」
「どこに! どこに! ま!……」
「やっぱりすうっと胸のすくような傷痕をしてでござんすな。