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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Read 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 240,656 characters · 478 screens
三
「分りました、分りました。それならそうと、あっさりおっしゃって下さりましたらよろしかったのに、何もかも、もう分りましてござります。ほんのこれは些少でござりまするが、わらじ銭代りと思召しなさいまして、お納め下されませ」
卑しげに笑い笑い、憚りもなく差し出したのは紙にもひねらぬむき出しの小判が二枚です。
「控えろッ」
当然のごとくに退屈男の一喝が下りました。
「目違いするにも程があろうわッ。身共を何と心得おるかッ。そのような汚物がほしゅうて対手したのでないわッ。退屈なればこそあしろうたのじゃ。それなる四人! 急に腰の一刀が鞘鳴りして参った。前に出ませい! 尋常に前へ出ませい!」
「いえ、もう、お四人様はともかく、手前が不調法致しましてござります。そのように御威張り遊ばさずと、お納め下されませ。小判の顔を拝みましたら何もかも丸う納まります筈、では失礼。お四ッたり様もお早く! お早く!」
不埓にも町人は飽くまでも退屈男を、ゆすりかたりの物乞い浪人とでも見下げているのか、小判を足元に投げすてながら、四人の取り巻侍を促して逃げるように姿を消しました。
三
退屈男の憤激したのは言うまでもないことでした。