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はたもとたいくつおとこ

旗本退屈男

佐々木 味津三

Read 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 240,656 characters · 478 screens

Aozora Bunko

七

駕籠屋!」

さし招くと、

「ひと儲けさせてとらそう。早う参れ」

一二丁程向うにいざなって、ちゃりちゃりと山吹色の泣き音をさせながら、裸人足共の手のうちに並べて見せたのは天下通宝の小判が十枚――。

「これだけあれば不足はあるまい。どこぞこのあたりの駕籠宿に参って、至急にこれなる乗物、飛脚駕籠に仕立て直して参れ」

「どうなさるんでござんす」

「ちと胸のすく大芝居を打つのじゃ。ついでに替肩の人足共も三四人狩り出して参れよ。よいか、その方共も遠掛けのように、ねじ鉢巻でも致して参れよッ」

命じて去ろうとすると、いかなる奇計を用いようというのか、退屈男の口辺に再びのぼったのは不気味な微笑です。――そうして四半刻……。

七

「どいたッ、どいたッ、早駕籠だッ」

「ほらよッ、邪魔だッ、早駕籠だッ」

道々に景気のいい掛け声をバラ撒きながら、程たたぬ間に人足達は、早打ち仕立ての一挺を軽々と飛ばして来ると、得意そうに促しました。

「どうでござんす」

「ほほう、替肩を六人も連れて参ったな。いや、結構々々。これならば充分じゃ。では、その方共にも見物させてつかわそうぞ。威勢よく今の門前へ乗りつけて、江戸公儀からの急飛脚じゃ。