Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しほんたいへいき

私本太平記(七)

吉川 英治

Read 私本太平記(七) (しほんたいへいき) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 330,262 characters · 662 screens

Aozora Bunko

けれど御領下の百姓やお家にとっては大切な物なので、ただいま、納戸の御書類棚へちゃんと納めに行くのでございますでな」

「でも、絵本だってあるんだろ」

「そんな物はございませぬ」

「あるよ」

「ございません」

「あるじゃないか」

「あ」

爺が身をかわすまに、抱えていた簿冊のあいだから、すばやい子供の手が、チラと彩色の見えた検見絵図の一帖をさっと抜きとって、もう下でひろげだしていた。のみならず爺は抱えていた山も下へ崩してしまッて、怒りもならず、拾いあつめながら。

「さ。和子さまたち。お返しください。絵でも何でもございますまいがの」

「じい。そっちのは」

「ほれ。こちらのは、このとおり、なおつまりません」

「もっと、下のだよ」

爺の左近はもてあまして、もうなすままにまかせていた。すると、ひと間から出て来た卯木が、小走りに、

「ま……。観世丸までが」

と、そこへ来て、まず一ばん小さいのから順々にあやして、ともかく、爺を無事に逃がしてくれた。

その代り彼女は三人にまといつかれて、元の部屋へは帰れなかった。で、ぜひなく庭へ遊びにつれ出して、「そっちへ行ってはあぶない」また「こっちで騒ぐとお兄さまのお勉強の邪魔になる」