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ひきょうのにちりんき
秘境の日輪旗
蘭 郁二郎
Read 秘境の日輪旗 (ひきょうのにちりんき) by 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 84,829 characters · 169 screens
二人の男は、たしか支那人らしいが、もう一人は、洋装した混血児のような女だった。
「ばかにおそいじゃねえか」
肥った、頬っぺたのテカテカ赤い男がいった。
「何かへまをやりやがったんだろう」
痩せこけた、頬骨の出た男だ。
「大丈夫よ、心配しなくたって」
混血児らしい女がいった。
三人の様子で見ると、痩せた男が頭株で、肥っているのは、香山飯店のおやじ、混血児らしい女は、外国人相手の酒場にでも勤めているのか、それともダンサーなのかも知れなかった。
――こつこつ、こつこつ……
どこからか信号のようなノックの音が聞えた。
「おい――」
痩せた男が目くばせすると、肥った香山飯店のおやじが、うなずいて立上った。
部屋の隅の柱についたボタンを押すと、その上の天井がぽっかりと開いて、折畳みになった梯子がするすると下へ伸びて来た。
「ばかにおそかったじゃねえか……」
「途中で、バカな手間をとってよ……」
黒い雨合羽を着た男――趙の声だ。
「おいねえちゃん、そろそろおりて来なよ、何も遠慮するこたあねえから」
「誰だい? 趙、めったな人間じゃああるまいな!」
「叱っ!」
趙は、香山飯店のおやじの耳もとで、何かひそひそと囁いた。