Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ひきょうのにちりんき
秘境の日輪旗
蘭 郁二郎
Read 秘境の日輪旗 (ひきょうのにちりんき) by 蘭 郁二郎 (らんいくじろう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 84,829 characters · 169 screens
真夜中の船客
大尉は腕組みをしたまま、じっとテーブルの上の地図に目を落した。
香港攻略戦で、百千の皇軍が血を流したビクトリアの峰、オーステン山兵営のあたりには日章旗がはためいていた。
砲台という砲台、兵舎という兵舎が、皇軍の猛攻に砕きつぶされたのに、海岸のビクトリア街から、緑の森につつまれた山腹の家まで、これが生々しい戦場だとは、どうしても思われないような、ととのった街にかえっていた。
真夜中の船客
かわいた風が、唸りをあげて、鋪道の紙屑やボロきれをさらって行き、直角に突き出された横文字の看板が、二十日鼠のようなキーキーした音をたてている――夕方からは、それに、雨もまじって、要塞砲のとどろきにも似た波の音が聞えた。
一日も早く、シンガポールの兄のところへ――英夫の心は急いでいたが、おあつらえむきの飛行機はもちろん、船も、この時化では当分見込みがなかった。
英夫は、平林大尉とおなじ宿の窓から、あらしの街をながめながら、ただいらいらするばかりで、どうすることも出来なかった。
大尉は、あっち、こっちと、いそがしくとびまわっているらしく、朝、家を出たきりで夜になってもなかなか帰って来なかった。