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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(四)城の絵図面
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(四)城の絵図面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,179 characters · 280 screens
銭形平次捕物控
一
一
相変らず捕物の名人の銭形平次が、大縮尻をやって笹野新三郎に褒められた話。
その発端は世にも恐ろしい「畳屋殺し」でした。
「た、大変ッ」
麹町四丁目、畳屋弥助のところにいる職人の勝蔵が、裏口から調子っぱずれな声を出します。
「何だ、また調練場から小蛇でも這い出して来たのかい」
と、その頃は贅の一つにされた、「猿屋」の房楊枝を横ぐわえにして、弥助の息子の駒次郎が、縁側へ顔を出しました。
「それどころじゃねえ」
「町内中の騒ぎになるから、少し静かにしてくれ。麹町へ巨蟒なんか出っこはねえ」
「今度のは巨蟒じゃねえ、丈吉の野郎が井戸で死んでいるんだ」
「なんだと」
駒次郎は、跣足で飛降りました。そこから木戸を押すとすぐ釣瓶井戸で、その二間ばかり向うは、隣の屋敷と隔てた長い黒板塀になっております。
丈吉の死体は、井戸端にくみ上げた釣瓶に手を掛けて、そのまま崩折れたなりに冷たくなっていたのでした。
抱き起してみると、右の眼へ深々と突き立ったのは、商売物の磨き抜いた畳針。
「あッ」
駒次郎も驚いて手を離しました。
「ね、兄哥、丈吉の野郎が、何だって畳針を眼に突っ立てたんでしょう」