Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(四)城の絵図面
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(四)城の絵図面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,179 characters · 280 screens
五
――私はツイ、絵図面を隠して、ほんの半日でも父さんを困らせ、三年前の約束を思い出させたかったんです」
「…………」
平次は二十歳娘の盲目な恋を火のように近々と感じておりました。が、追及したところで、これ以上は言わなかったでしょう。
奉公人達の心持や口裏を探ると、――お勇と三年前に約束したのは、内弟子の良助で、いずれは婿に容れて、藤兵衛の跡を継がせる口約束までしましたが、男振りに似合わず、腕の鈍い良助は、次第に藤兵衛に愛想を尽かされて、近頃は努めて娘をやる約束を、忘れさせようとしている様子だったのです。
とうとう嫁入りの時期を遅らせて、二十歳島田の歎きを見たお勇が、近くこの家から放り出されそうな良助のために、大事の絵図面を隠して、一か八かの大論判を、父親と開くつもりだったのでしょう。
五
「親分――曲者は同じような畳紙を用意して、お杉が出た後、偽絵図面を神棚へ供え、大急ぎでお勇の部屋から真物を掻っ払ったのだね」
とガラッ八の八五郎、なかなかに穿ったことを言います。
「その通りさ、――ただ、同じような畳紙まで用意するのは、企みが深いな」
と平次。
「でも、どんなに企みが深くても、外から持って来たのではないでしょう。