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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(四)城の絵図面
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(四)城の絵図面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,179 characters · 280 screens
「何が大変なんだ、少し落着いて物を言え、お神楽堂から飛出した潮吹みたいな風じゃないか」
平次は静かに煙草盆を引寄せました。
「落着いちゃいられませんよ、またやられたんだ」
「何だと?」
「三河屋のお三輪が、踊屋台の中で――」
「行ってみよう」
平次は立上がると、寸刻の猶予もなく、湯島一丁目まで飛んで行きました。
踊屋台は、界隈第一番という分限者、大藩の御金御用達を勤める三河屋の横手、久しいあいだ空地になっているところへ引込んだまま、夜も亥刻(十時)近くなると提灯を二つ三つ点け放して、あまり人も寄り付かなかったのです。
その踊屋台の中、揚幕の蔭に、三河屋の一粒種で、町内の自慢の一つになっているお三輪が、揃いの祭り手拭で、痛々しくも縊り殺されていたのです。
この娘も、前の晩殺された荒物屋のお今と同じ十七、身上に隔たりはありますが、負けず劣らず美しい娘でした。
三河屋の両親の歎きは見ている方も気が狂わしくなるくらい。
「お三輪、お三輪」
「何だって、死んでくれた」
「誰がこんな目にあわせたんだ」
「言っておくれよ、お三輪」
半狂乱の両親は、検屍も調べも待たず、四本の手に抱き上げて、よろぼいよろぼい庭を隔てた自分の家へ担ぎ込んで行ったのです。