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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(四)城の絵図面

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(四)城の絵図面 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 139,179 characters · 280 screens

Aozora Bunko

「怨みとなると――」

「知っての通り、綱吉はやくざ者には相違ないが、まことに男振りも評判も好い男だ。人に怨まれるような人間じゃねえ」

「すると」

「女だよ、八兄イ」

「ヘエ――」

「この間から、神明の水茶屋の、お常の阿魔に熱くなりやがって、毎日入りびたって、渋茶で腹をダブダブにしてやがったよ」

「お常っていうと、近頃評判の?」

「そうだよ。あの阿魔は全く綺麗すぎるから、何か間違いがなきゃアいいがと思っていたが、とうとうこんな事になりやがった――」

「じゃ、親分には、もう下手人の当りはついたでしょう」

と八五郎。

「まアね。後学のために話しておこう。ネ、八兄イ、よく見ておくがいい。これはお前、脇差や匕首を突っ立てた傷じゃねえ、肉の反り具合から言うと、槍でなきゃア、よく磨いだ鑿だ」

「…………」

友次郎はそう言いながら、死体の袷を肩から剥いで、左の貝殻骨の下に口を開いた、物凄い傷をガラッ八に見せました。

「ね、解ったろう。いくら夜だって、やくざ者一人を殺すのに、江戸の町の真ん中へ、槍を持出す人間もあるめえから、これは鑿に決っているんだ」

「…………」

友次郎は少し獅子ッ鼻をうごめかし気味に、下水の端っこに踞んだ八五郎の、あまり賢くなさそうな顔を見上げました。