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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Read 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 262,100 characters · 523 screens
お十夜にこういって、お綱はその日昼いッぱい寝る。翌晩も、夜はブラリと出だして、昼寝する。なるほど、これではお嫁になれない性。
と思うと、四日目か、五日目。
朝風呂につかって、厚化粧して、臙脂を点じて、髪も衣裳もそッくり直した見返りお綱。パチンと紺土佐の日傘を開いて、住吉村から出て行った。
どこへ行くのか、何を目星か、縦から見ても横から見ても、掏摸とは思えぬ品のよい御寮人様。
四天王寺の日除地、この間までの桃畑が、掛け小屋御免で、道頓堀を掬ってきたような雑閙だ。
日和はいいし、梅若葉に幟の風、木戸番は足の呼び合いに声をからしている。
名古蝶八の物真似一座を筆頭に辻能、豊後節の立て看板。野天をみると、江戸上りの曲独楽に志道軒の出店。そうかと思うと、呑み棒、飴吹き、ビイドロ細工、女力士と熊の角力の見世物などもある。
「さあ、いらはいいらはい。ナガサキ南京手品ある。太夫さん、椿嬢、蓮紅嬢かけ合いの槍投げ、火を放けて籠抜けやる。看板に嘘ない」
唐人ぶりが珍らしいので、この前がまた大変な人だかりだった。
「変ってやがる、べらぼうな入りだな、ちょッとのぞいて見ようかしら? だが、待てよ……」