Japanese reading practice

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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

Read 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 262,100 characters · 523 screens

Aozora Bunko

時雨堂の中はガランとしていて、そのうちに月が出たので、こわごわあたりを見廻すと、どこからどこまで血の池のようなんです」

「おまけにあすこの大欅へ、さッきの雷が落ちたものとみえまして、黒装束の者が二、三人、その木の下に斃れていますし、時雨堂の中はといえば、そこも、切ッつ切られつした返り血と、土足の痕がいっぱいで、目も当てられない狼藉でございます」

「おウ……」と呻くがように弦之丞、次の語をやや急き気味に、

「して、銀五郎と多市はいかが致しました」

「その多市さんは……」

半斎の弟子二人は、そこで、見てきたばかりの酸鼻のさまを、まざまざと思い浮かべたらしく、気の毒そうに顔を見あわせた。

「手足が利かなかったから、真っ先に斬られたのでしょう。多市さんのほうは、縁先と部屋の間で、ズタズタに斬られておりました。ところが銀五郎親分のほうは、どうなったものでしょうか、いっこう行方が知れませんです」

「姿が見えない?」

「はい」

「そして、関の裏道へ向ったという駕は、たしかに二挺でござったか」

「群れ鴉のような大勢に、取り巻かれて行ったのを見ただけで、しかとは申されませんが、その駕はどうも二つのように思いました」