Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

Read 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 262,100 characters · 523 screens

Aozora Bunko

「驚くことはなかろう、お十夜だ」

「アア……」とお綱は後ろへ手を支えて、黒猫に似た孫兵衛の姿をみつめながら、

「……とうとうここまでやってきたね」

さすがに、胸は少し動悸を打ったが、語気にひるみは見せなかった。

「なんで来ずにいるものか」と孫兵衛は、凄くニヤリとしてみせながら、

「てめえが江戸へ来れば江戸表へ、北へ逃げれば北の果てまで、我を折って俺の心に従うまで、付きまとってやるということは、オオ、いつか関の明神でも、たしかに言い渡してある筈だ」

「ご苦労さまだねエ」

お綱はツンと横を向いて、

「道理でこの間うちから、妻恋坂の私の家やこの辺を、きざな雪踏がチャラついていると思ったら……」

「じゃうすうすは、おれの真意を感づいていたろうに、ずいぶんてめえも薄情けな、血の冷てえ女だの」

「ホ、ホ、ホ……」お綱は鼻であしらうように、

「うす情けだなんていう言葉は、お十夜さん、お前の柄にはまらない文句だよ。私の血の冷たいのは生れつき――そう育ってきたのだからしかたがないやね。嫌いな者には氷のよう、その代りにまた、好きな人へは火よりも熱い心になるのさ」

「そんな熱に浮かされている年頃には、どこの女も、みんなてめえと似たようなたわごとをいってるものなのさ。