Japanese reading practice

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なるとひちょう

鳴門秘帖(一)

吉川 英治

Read 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 262,100 characters · 523 screens

Aozora Bunko

「じゃあ、余りあせらぬことにしよう」と、孫兵衛、腹ばいがくたびれたので、ゴロと仰むけに寝ざまを変えたが、まだ起き出そうという気は出ずに、じっと天井へ眼を向けている。

周馬も、それを真似して仰むけになる。

しばらくは、どっちからも口を開かずに、沈思黙考、天井板と相談をしているというふうである。

雪の日だ。悪智をめぐらす頭も、自然にシンと落ちついてくるらしい。

「ウーム……」やがて周馬がこう唸った。

「どうした?」

「凶兆歴々。どうも吾々の前途は暗いな」

「ばかいやがれ」

お十夜が、肯んぜない。

「イヤしかし、ゆうべも焼け跡で、現に、法月弦之丞の姿を見かけたではないか」

「あんなに肝を消して、逃げる奴があるものか。そっちが泡を食って駈けだしたので、おれまで釣り込まれてしまったが、今度いい折があった時は、叩ッ斬ってしまうことだぜ。いいか周馬、また逃げ腰にならねえようにな」

「ムウ……」といって目を閉じたが、旅川周馬、悪党のくせに大火以来、また、弦之丞の姿を見たりしてから、少し神経衰弱のきみで、スッカリ気をめいらせてしまった。

空しい日が幾日か過ぎて、いよいよ年の瀬も押しつまってきた。