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なるとひちょう
鳴門秘帖(一)
吉川 英治
Read 鳴門秘帖(一) (なるとひちょう) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 262,100 characters · 523 screens
「失礼だが、こんな物のある家ではないのに、大事に納ってあったところをみても、刀――といったのはこれでしょう。ではお綱さん、養父さんの遺言どおり、これはお前さんに渡すから、とにかく、一時どこかへ落ちのびて、番屋のほとぼりをさますがいい。――そしてな、まじめになって、世間の噂を消しなさいよ。この養父さんがいいお手本だ」
口をそろえて、長屋の者、遠い旅立ちの門でも見送るように、涙にくれるお綱を促して、手を取らんばかり、否応なく外へ出る……。
と、遅かったか!
見馴れぬ提灯と侍の影が、あたりを見廻しながらこの路次へ入ってきた。
一同が、ハッと胸を躍らして、そこにいすくんでしまっていると、上役人らしくない若党を連れた年配の武士。
「紋日の虎と申す者の家はどこであろうか」
「は、その家なら……」となお、何事かと怪しみながら、「ここでございますが」というと、
「わしは龍泉寺に住む、小池喜平という御徒士の者じゃが」侍から先に身分を明して、立話のまま来意を話しだした。
その言葉を一同が聞いていると、こうである。
自分の甥が、昨日吉原へきてフトした間違いから人を斬ったというので、密かに調べてみると、それは、いつも附近で見かける角兵衛獅子の姉弟の、たった一人の男親だということ。