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やまうらきよまろ

山浦清麿

吉川 英治

Read 山浦清麿 (やまうらきよまろ) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 45,573 characters · 91 screens

Aozora Bunko

二

直胤の鍛刀などよりは、無名のこの作者のほうが、遙かに、魂がはいっておる』

呟いて、木綿袋へ巻き直し、

『では、行って来るぞ』

と、膝を起てかけた時である。

折も折、客とみえて、玄関に控えていた仲間が、そこから告げた。

『御新造さま。山浦の御舎弟がお見えでござりますが』

声を聞いて、嘉兵衛が直かに、奥で云った。

『なに、真雄の弟が見えたと。……むむ、大石村へ養子に行ったとか聞いていたが、あの環と申す次男であろう。いい所へ来た。ちょっと上げろ』

二

山浦環は、又の名を内蔵助とも称った。まだ二十歳ぐらいで、固く畏まって坐った。黒い眸には、どこかに稚気と羞恥みを持っていた。

藩士ではない。小諸に近い山里の郷士の子である。だから城下へ出て来る時など、殊に身を質素にしていた。粗末な木綿の着物に木綿の袴――どこと云って派手気のない田舎びた青年だった。けれど、それで居て、肩の薄い肉づきだの、整った目鼻だちだの、天性の端麗が、どこやらに潜んでいた。

『……そうか、御年貢の事で、お蔵役所まで参ったのか。よく寄ってくれた』

『序と申しては、恐れ入りますが、以来、御無沙汰いたしております。