Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

やまうらきよまろ

山浦清麿

吉川 英治

Read 山浦清麿 (やまうらきよまろ) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 45,573 characters · 91 screens

Aozora Bunko

三

二十一、二の年ごろで、下町育ちの歯ぎれと、情操と才とが、清麿の気もちにぴったり合った。然し彼は、窪田清音の誡しめがあったばかりでなく、血を吐く胸の病竈を自覚してからは、触れてならない花のように見ていた。そして、それを冒しかける自分の心を、時には惧れた。

三

晩秋となると、この界隈の屋根も廂も、木の葉の雨だ。

今朝も彼は血を見た。――唇からである。

『ゆうべの酒が祟った……』

と、思う。そして慚愧にたえぬ面を井戸に洗う。

鍛冶小屋に霜が白かった。

清人が、朝早くから、一人でコチコチ仕事している。彼自身の作にかかっているのだ。

『どうだ、銘刀が出来そうか』

『あ……お眼ざめで』

『いい、いい、おれの事はいい。今度の仕事は、お前の腕が初めて世間で試めされる大事な一本だ。慥乎、鍛てよ』

『師匠のようには参りませんが、師匠の一心不乱だけは、学んでやる覚悟です』

正直者だけに、清人は、唇を噛みしめて、その一生懸命な意気を、顔つきに描いて見せた。

それは、首斬り役の山田浅右衛門から来た註文なのである。清麿に――という依頼であったが、

(刑場で使う刀は鍛たない)

と、あっさり断ったので、ならば、お弟子の内でもというので、清人を世に出してやる為に、引請けたものだった。