Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
やまうらきよまろ
山浦清麿
吉川 英治
Read 山浦清麿 (やまうらきよまろ) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 45,573 characters · 91 screens
『おおーい。おおいっ……待てようっ』
誰か、後から追いかけて来る者がある。編笠を被って、干飯袋に旅の持物を入れ、短い義経袴の袴腰にくくり付けている若者だった。
町の辻で、若者は環に追いついた。
後から肩を掴んで、
『待てと云ったら。――聾か、貴様は』
『何!』
気が立っているので、環も、きらっと眼を研いで振向くと、編笠の中の顔は、自分よりもっと若い――まだやっと十七、八歳かと思われる少年武士なのであった。
が――年上の環よりは、どこか沈着で、大人びている口吻であり、態度も鷹揚に、
『何を怒るのか。わしは貴様に好意を持って、わざわざ追いかけて来た者だぞ』
『怒ったわけではないが、つい、気の紊れていた矢先なので』
『そんな事で何うする』と年下のくせに、少年はそう窘めて、
『長国寺の刀試し――どんなものかと、わしも見ていたのだが――貴様はうまうまと、箕兵衛直胤の手に乗ったのだ』
『えっ、ど、どうして?』
『二度目だ。――あの時、貴様が最初に気合をこめた儘、やってしまえば、古兜の鉢金ぐらい、きっと斬れていたに違いない。老獪な相手方は、その鋭い気を抜くため、わざと待てと声をかけ、何の必要もないのに、兜の位置を少し直したりしたのだ』