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やまうらきよまろ

山浦清麿

吉川 英治

Read 山浦清麿 (やまうらきよまろ) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 45,573 characters · 91 screens

Aozora Bunko

『折角、今夜は夜半から、仕事にかかろうと寝ているのに、うるせえ奴だな』

『師匠、今、燈火をつけて持って来ますが、ひとつ鑑て戴かれましょうか』

『なんだ、鑑てくれとは』

『お蔭様で、山田浅右衛門から註文された刀が、やっと仕上りましたんで』

『ほう……』と、ニッコリして、

『出来たか。どれ見せろ』

清麿が欣んでくれたので、清人は、行燈を片手に、白鞘に仕立てたばかりの一口を持って来て、差出した。

清麿は、鞘を払って、凝と、眉をよせていたが、ずかっと起ち上るなり、

『だめだ。こんな物!』

閾の隙に突っ込んで、ヘシ曲げてしまうと、がらりと、庭先へ投げ捨ててしまった。

『あっ……師匠っ』

清人が、泣き声を出すと、

『何だ、惜しそうに。あんな物なら鍬鍛冶でも鍛つ。小手先でもヘシ曲がるような飴細工を、清麿の弟子の刀といわれては、おれの名折れだ』

『……へ。……へい。……済みません』

『刀とは、こうして作るものだ。仕事場へ来いっ』

もう、そう云った時の顔つきから、清麿の面には、ここ久しく出なかった、仕事への凄まじい情熱――あの夜叉にも似た血相が漲っていた。

四

その夜から師も、弟子も、厠にゆく時のほかは、鍛冶小屋を離れなかった。