Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
やまうらきよまろ
山浦清麿
吉川 英治
Read 山浦清麿 (やまうらきよまろ) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 45,573 characters · 91 screens
清麿は、今日まで、何処にいたとも語らなかった。――だが、彼の死後に現われた刀の切銘には、「長州萩城ニ於テ作ル」としたものや「村田清風先生ノ為ニ鍛ツ」と切った作刀がかなり見られるので、長州に潜伏していた事は、想像に難くない。
江戸に帰った後も、彼の生活は変らなかった。又、信念も変らなかった。
象山はあれから後、一度帰国したが、次の出府には、清麿も又、江戸に戻っていたので、木挽町に行くことも、前と変らない。
金子重輔と一緒に、吉田松陰と会ったのも、木挽町のそこの書斎であった。松陰とは、その時が初めてではない。清麿が長州にいるあいだ、幾度か、その人の風には接していた。自分よりはずっと年下であったが、清麿には、忘れ得ない人のひとりであった。
その松陰は、江戸からすぐ又、長崎へ向って立つと聞いたので、清麿は、自作の小柄一本を餞別にと持って、翌日、象山の家を訪うと、
『惜しかったの、もう今朝立った』
というので、彼は落胆して、帰りかけた。
すると、象山は、
『実は……』と、彼に松陰の旅行の大事を打明けて、
『わしも、松陰が立った後から、彼の大望を激励する意味で、一詩を書いたが、もう間にあわぬものと、ここに巻いて淋しく思うていた所だ。