Japanese reading practice

Read classic Japanese books with furigana

ja-reading.com

Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.

しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

Read 新編忠臣蔵 (しんぺんちゅうしんぐら) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 337,181 characters · 676 screens

Aozora Bunko

時刻は、正に寅の下刻(午前五時頃)だった。わずか四日半で着いたわけになる。二人は勿論、瀕死の病人に等しいものだった。

大石家では、早駕がつく少し前に、先触れの人足が、門をたたいて、

(江戸表から、御急使が着きまする)

と告げたので、

(何事?)

と家族たちは、一人のこらず起きて、早駕の着くのを胸とどろかせながら待ちうけていたのである。

厨では、粥を煮、式台には、妻女のお陸だの、主税だの、召使たちもこぞって出ていた。そして駕籠を見ると、

『早水様に、萱野様か』

と、初めてその人を知り、用意しておいた薬湯を与えるやら、草鞋の緒を解かせるやら、手をとって式台へ上げるやら、真心をこめて労わったが、内蔵助は声もせず、そこに、姿も見せない。

『御子息、勿体ない……。御挨拶は後に』

藤左衛門は、主税に向って会釈をしたり、お陸に対しても、気丈さを示して、よろめきながらも自身で通ったが、三平の方はまったく、呼吸があるだけの容体だった。召使が、背に負って畳の上まで運んだ程で、その畳へ、べたっと手を落すと、

『ああ……』

あやうくそのまま意識を失ってしまいそうにすら見える。

藤左衛門は、三平の気を励ますように、わざと大きな声で云った。