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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

Read 新編忠臣蔵 (しんぺんちゅうしんぐら) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 337,181 characters · 676 screens

Aozora Bunko

『山科? じゃあ、赤穂浪人の大石内蔵助という男じゃありませんか』

『そうかも知れない』

『島原でも、よく遊ぶ』

『そんなに、金があるんですか』

『何しろ、元は、一国の家老職、どさくさ紛れに、ずいぶん金を匿してもおいたろうしさ』

『だが、ああいう御家老様じゃ、赤穂の潰れるのも当りまえだ。呆れたもんじゃありませんか』

『いや、この頃の武士は、あの家老ばかりでなく、昔とはまったく変って来ましたな。衣裳や刀のこしらえに派手ばかり競って浪華でも島原でも、豪奢な遊びといえば、大名のお留守居か、蔵役人か、町方与力などで、なかなか町人の金持も及ばないのがありますよ』

『しかし、これでは、吉良家では、大安心でございましょう』

『そうそう、おかしな噂があったが、あれも、この調子じゃあ……』

竹之丞の膝に、鼾をかいて眠っている内蔵助の顔をみて、皆、くすくすと笑うのだった。

『…………』

じっと、狭い肩身を竦め合ったまま、潮田又之丞、小野寺幸右衛門、武林唯七の三名は、顔も得上げずに、暗い川面を見つめていた。

――純情な三平の死だの、幾多の同志の艱苦などを、頭の隅にえがきながら……。

自作唄