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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

Read 新編忠臣蔵 (しんぺんちゅうしんぐら) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 337,181 characters · 676 screens

Aozora Bunko

と祐海はひき取って、

『……実は、ただ今、これへ立ち寄ると、二挺の駕籠をしつらえて、御家内のお陸どのが、吉千代どの、るり殿、大三郎殿、三人のお子を連れ、涙ながら何処かへ出かけられる御様子に、仔細を聞けば、今日、内蔵助殿より暇を出され、但馬豊岡の御実家、石塚源五兵衛どの方へ、身を退かれるというお話でござった』

『えっ……では……御離縁になって?』

二人は、茫然と、闇を振り向いた。たった今、坂の下ですれちがった駕籠がそれであったかと思い合せて、

『惜しいことをいたした。――数右衛門、おぬし、嬰児の声を聞いたと云ったの』

『それとは気づかなかった』

『何で大夫が離縁したか、もう、深い理は聞かいでも読める気がする。――何の、われ等がそれを見て居られようか。主税どの、泣くな、母上を呼びもどして来て進ぜる』

惣右衛門が走ろうとすると、

『あっ、もしっ』

主税は、彼の袂をつかんで、

『――捨ておいて下さいませ』

『なぜ?』

と、咎めるように眼を光らせて、惣右衛門は、主税へ云った。

『其許は、母が、離縁になって、但馬へ行くのを、悲しいとも何とも思わぬのか。――四人も子どものある身をして、女が、去られて遠い実家へ行く気持は、他人の惣右衛門でも腸をちぎられるような心地がいたすのに』