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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
Read 新編忠臣蔵 (しんぺんちゅうしんぐら) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 337,181 characters · 676 screens
果しがないので、源吾は、
『いずれ、今度は、金でも儲けて、又会おう』
起ちかけると、
『あいや、ちょっと……』
『何だ』
『申し難いが、細かい銭をすこし、お持ち合せはないか。実はかくの通り、単衣まで質に入れてしまったので、金策に出られぬ始末』
『金か。……生憎と此方も』
『なに、そう重くいう程な金ではない。お持合せでも……』
源吾は、巾着から、事実乏しい小銭を出して、
『こんな僅かで? ……』
『結構結構。これで夕方が助かる』
往来へ出て来ても、源吾はすぐに待っている弥左衛門に話しする気にもなれなかった。――ああまで人間も落魄れるものかと思う。金銭の貧富ではない、心の落魄れようである。何か、涙が睫毛につきあげて来てならなかった。
(もし、亡君があれをお知りになるものだったら、何んなお気持か)
それを思い出したのである。
いつぞやの円山会議に顔を見せない欠席者のうちで、内蔵助の眼で、これはと思う人々へは、こちらから血判を持って行って返して歩くように――と、これは勿論、内蔵助の深謀で、大高、貝賀の二人が命じられて、毎日戸別訪問して来たのであるが、その結果、
(なるほど、さすがは大石殿、よく観ておられた)