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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
Read 新編忠臣蔵 (しんぺんちゅうしんぐら) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 337,181 characters · 676 screens
『神崎殿か』
すると下で、
『おお、矢頭と、それがし』
右衛門七をうしろに連れて、小間物屋善兵衛の与五郎が上って来た。
『遅くなって申し訳ない』
『待ちかねたり、案じたりだ。もうすこし見えなかったら、倉橋が見に行こうと云っていたところ』
『――ちと、こよいに迫る仕事があって』
『店にか』
『なんの、吉良のほうに』
『何かあって』
『されば、矢頭、その土産を、御一同へお目にかけてみい』
右衛門七が、燈りの下に出して見せたのは、半分に割れた板絵図だった。
『や……これは吉良家の』
『ウム、やっと手には入れたが、残念なことに、その半分を失ってしまった。しかも、上野介の寝所から奥向きにかけての方がない。長屋門から表の様子はほぼ見ゆるが……』
『どうして、神崎、これを今夜』
『店へよく買物に来る吉良家の小間づかいで、お粂という愛くるしいのがいる。――それが右衛門七に懸想しているので、罪とはおもったが、大義のため、ゆく末は夫婦にしてやると欺いて、奪り出させたのだ』
今夜の結果も併せて話すと、村松喜兵衛老人は、膝を打って、つい蔵の外にまで洩れそうな大声を出して云った。
『なに、これも女か! 女の手に依って奪り出したのか! 残念なことを。