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しんぺんちゅうしんぐら
新編忠臣蔵
吉川 英治
Read 新編忠臣蔵 (しんぺんちゅうしんぐら) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 337,181 characters · 676 screens
どうだ、ちょうど木村丈八も来て、今一杯やっている所だ。拙宅へ入って、一献やらんか』
『たくさんだ!』
新見弥七郎は、憤っと顔をそむけたまま、立ち去った。
翌る日。親元にあたる大工棟梁の吉五郎は、
――其方娘粂、お勤向キ不都合ニ付
と云う呼び出し手紙を吉良家から受け取って、吃驚して娘の身がらを受け取りに来た。
そして、邸を出ないうちから、
『この阿女め、長年、御恩のあるお出入先に、何んな不埓をしやがったのか。よくも、親の面に泥を塗ったな』
打ちすえないばかりの叱言だった。真つ蒼に憤っている親の手に引っ張られて、すごすごと裏門から出てゆくお粂のすがたをちらと見て、一学は、窓から、
『おい、吉五郎、吉五郎』
と、呼び止めた。
『オ、旦那ですか。今日は、お合せする面もございません』
娘のすがたを、醜いものでも隠すように後へ庇って、吉五郎は、鼻をつまらせて窓のほうへ頭を下げた。
『誰が、呶鳴って通るのかと思ったら、娘に怒っているのか』
『へい、とうとうこれで、お邸も、しくじりものでさ』
『あまり叱言を云うなよ。それより、早くいい聟でもさがしてやることだ』
『そんな甘いお言葉をかけて下すっちゃ困ります。