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しんぺんちゅうしんぐら

新編忠臣蔵

吉川 英治

Read 新編忠臣蔵 (しんぺんちゅうしんぐら) by 吉川 英治 (よしかわえいじ) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 337,181 characters · 676 screens

Aozora Bunko

この上、極力、敵方の探索を怠ってはならないと、内蔵助は思うのであった。

『横川』

『はっ』

『すぐ、もいちど、松坂町へもどれ――。そして、あの辺に潜んで見張っている衆へ、そっと耳打して、ぬかるまいぞと申し伝えてくれい』

『では――』

と、勘平が立ち去ると、

『主税、主税』

と、一室へ呼びかけて、

『支度せい。そちは、吉田忠左衛門どのの許まで、一走り行って来い』

『かしこまりました。――お父上は』

『わしも、其処此処となく』

と、つぶやいて、

『出炉じゃ、頭巾を出してくれい』

と、炬燵から起った。

此一期・月雪花

菜鳥椀

今年のように雪の多い年も珍らしいと、長生きしている年老さえ、眼を瞠って戸外に眺め入るのだった。――ちょうど十一日から降りだした雪なのである。何時ものぼとぼとと重い牡丹雪とちがって、氷を削ったような銀屑が風を交ぜて吹きなぐった。そして十二日も雪に明け、十三日も雪に暮れ、十四日の大江戸は、ほとんど雪の底に丸い凹凸を示しているだけで、世間は終日、ほとんど人声もしない。

ゴト、ゴト、ゴトと下駄の歯の雪をたたく音が戸外に聞えた。丸い背を柱に凭たせかけて、炬燵蒲団をかぶっていた七十六歳の老翁は、むっくりと真っ白な髷を起して、