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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Read 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 240,656 characters · 478 screens
だけどもお大尽は、幾らあっしがお気に入りでも、どんなにあっし達が機嫌気褄を取り結んでおだてあげても、あの観音像ばかりはと言って、ちっとも正体を見せねえので、とどひと芝居書こうと考えついたのが、こちらの八ツ橋太夫なんです。――おお苦しい! もう、もう声も出ねえんです。苦しくて、苦しくて、あとはしゃべれねえんです。これだけ話しゃ、太夫がもう大方あらましの筋道もお察しでしょうから、代って話しておくんなせえまし。くやしいんだッ、是が非でも奴等の化けの皮を引ッぱいでやらなきゃ、死ぬにも死にきれねえんだッ。いいや、旦那にその讐を討って貰うんです! どうやら気ッ腑のうれしい旦那のようだから討って貰うんです。だから太夫、話してやっておくんなせえまし。あっしに代って、よく旦那に話してやっておくんなせえまし……」
「よう分りました。どうもお初の時から御容子が変だと思いましたが、それで何もかも察しがついてでござんす。話しましょう、話しましょう。代って話しましょうゆえに、江戸のぬしはんもようきいておくれやす。十日程前でござんした。こちらの弥太一様がわたしを名ざしでお越しなはってな、お前はこの曲輪で観音太夫と仇名されている程の観音ずきじゃ。