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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Read 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 240,656 characters · 478 screens
端役人共ッ、頭が高かろうぞ。もそッと神妙に出迎えせいッ」
「言うなッ。言うなッ、雑言申さるるなッ。いか程小理屈ぬかそうと、夜中胡散な者の通行は厳禁じゃッ、戻りませいッ、戻りませいッ。この上四ノ五ノ申さるるならば、腕にかけても搦めとってお見せ申すぞッ」
「控えろッ。胡散な者とは何事じゃ。さき程その方共は何と申した。公儀お使者ならば通行さしつかえないと申した筈でないか。即ち、われらは立派なお使者じゃ。行列つくって出迎えせい」
「まだ四ノ五ノ申しおるなッ。まことお使者ならば、公儀お差下しのお手判がある筈、見せませいッ、見せませいッ。証拠のそのお手判、とくとこれへ見せませいッ」
「おう、見せてつかわそうぞ。もそッと灯りを向けい。ほら、どうじゃ。これこそはまさしく立派なお手判、よく拝見せい」
にんめり笑って、ずいと突き出したのは眉間のあの向う傷です。
「どうじゃ。何より見事な証拠であろう。この向う傷さえあらば、江戸一円いずこへ参ろうとて、いちいち直参旗本早乙女主水之介とわが名を名乗るに及ばぬ程も、世上名代の立派な手判じゃ。即ちわれら直参旗本なること確かならば、将軍家お手足たることも亦権現様御遺訓通りじゃ。