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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Read 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 240,656 characters · 478 screens
「いるんですよ、一匹この街道にね。それも祠堂金ばかり狙う女スリだっていうんですがね、三十位の大年増に化けたかと思うと、十七八のかわいらしい奴に化けたりするっていうんですがね。どうもさっきの娘が臭せえんです。足の早えのも、ちッとおかしいが、今登っていったばかりなのに、あの青僧がきょときょと入れ違げえにおりて来たんだからね、てっきりさっきの娘がちょろまかしたに違げえねえんですよ」
言っているとき、またひとりそわそわしながらおりて来た五十がらみの、同じように講中姿した男がありました。しかもそれがやはり言うのです。
「あのう、もし――」
「財布か」
「じゃ、あの、お拾い下さいましたか!」
「知らぬ、知らぬ、存ぜぬじゃ」
「はてね、じゃ、どうしたんだろう。お山に行くまではたしかにあったんだがな。ねえとすりゃ大騒動だ。ご免なんし――」
通りすぎて程たたぬまに、またひとりきょときょとしながら坂を降って来ると、同じように青ざめながら、ぶしつけに言いました。
「もしや、あの?」
「やはり財布か」
「へえい。そ、そうなんです。祠堂金が二百両這入っていたんですが、もしお拾いでしたら――」