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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Read 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 240,656 characters · 478 screens
並んでいっぷくせい」
右へ二人、左へ三人、行く手を塞いだ四五人に、あっさり揚心流当て身の拳あてて片づけながら道を開いておくと、
「女つづけッ」
にったり打ち笑みながら、さッと駈け出しました。やらじと、前、横、うしろから藩士の面々が雪崩れかかろうとしたとき、――実に以外です。謎の矢場主英膳が、あの重籐の弓構えとって、突如矢場の切り戸わきに仁王立ちとなると、天にもひびけとばかり呼ばわりました。
「者共ッ、きけッきけッ。同志の身が危ういときくからは、われらも素姓知らしてやろうわ。何をかくそう、この英膳も同じその隠密じゃッ。三とせ前からこうして矢場を開き、うぬら初め家中の者共の弓の対手となっていたは、みな御老中の命によって当藩の秘密嗅ぎ出すための計りごとじゃ。――御前! 早乙女の御前! あとは拙者がお引きうけ申したぞッ。あちらを早く! 同志を早く! ――者共ッ、一歩たりともそこ動かば、江戸で少しは人に知られた早矢の英膳が仕止め矢、ひとり残らずうぬらが咽喉輪に飛んで参るぞッ」
言いつつ、射て放ったはまことに早矢の達人らしく一箭! 二箭! 飛んだかと見るまにヒュウヒュウと藩士の身辺におそいかかりました。