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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Read 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 240,656 characters · 478 screens
このような夜ふけに参られたとはよくよく武道御熱心の御仁と見えますな。只今御取次ぎ仕る」
のっしのっしとやって来て、ひょいと見眺めるや対手は、この上もなく意外だったに違いない。そこに佇んでいたのは紅顔十八歳、花も恥じらわしげな小姓だったのです。当然のごとく取次ぎの男は嘲笑ってあびせかけました。
「わはは。何じゃい何じゃい。今愉快の最中じゃ。当道場には稚児の剣法のお対手仕る酔狂者はいち人もござらぬわ。御門違いじゃ。二三年経ってから参らッしゃい」
「お控え召されよ!」
見くびりながら取り合おうともしないで引返そうとしたのを、凛と一語鋭く呼びとめると、さすがに京弥、傷の早乙女主水之介がこれならばと見込んで、愛妹菊路に与えただけのものはあるつぶ選りの美少年です。
「武芸十八般いずれのうちにも、小姓ならば立会い無用との流儀はござらぬ筈じゃ。是非にも一手所望でござる。早々にお取次ぎ召されい」
「なに! 黄ろい奴が黄ろいことをほざいたな。強って望みとあらば御対手せぬでもないが、当流釜淵流の槍術はちと手きびしゅうござるぞ。それにても大事ござらぬか」
「元より覚悟の前でござる。