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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Read 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 240,656 characters · 478 screens
「不審なことよのう。――京弥々々。京弥はいずれじゃ」
「はッ。只今! 只今参りまするでござります」
菊路とのうれしい恋の語らいが漸く済んだか、なぜともなくパッと頬を赤らめながら、倉皇として這入って来たのを眺めると、指さして言いました。
「それをみい」
「何でござります?」
「幽霊が菓子折を届けて参ったのよ。そちも聞いた筈ゆえ覚えがあろう。その名前よくみい」
「……? えッ! なるほど、源七とござりまするな。まさしくあの心中男、ど、どうしたのでござります。どこから誰が持参したのでござります?」
「今の先、青テカ坊主が黙ッておいていったわ」
「なるほど。では、只今のあの按摩でござりまするな」
「会うたか!」
「今しがた御門先ですれ違いましてござりまするが、あれならばたしかにめくらでござります」
「わはは。そうか。そうか。目は明いておるが盲目であったと申すか。道理で蛤のような目を致しおったわい。それにしても源七とやらは、とうにもう大川から三途の川あたりへ参っている筈じゃ。何の寸志か知らぬが、身共につけ届けするとは不審よのう」
言っているとき、
「あの、お兄様、またいぶかしい品が届きましてござります」