Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Read 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 240,656 characters · 478 screens
ところがいぶかしいことにはその絵師の住いに、ときどきどろどろと――」
「出るか!」
「尾花のような幽霊とやらが折々出ると申すんですよ。それもおかしい、売った工合もおかしい、御前のお扱いをうけて、あの場はどうにか無事に納まりましたが、あとで何かまたやったんではないかと、番頭どもも心配しておりましてござります」
「のう」
「また喧嘩に花が咲きましたら、何をいうにも対手は七人、それにお武家、先ず十中八九――」
「どくろ首の入れ墨男が負けじゃと申すか」
「ではないかと思いまする。狂言の方ではえてして、あの類の勇み肌が勝つことに筋が仕組まれておりまするが、啖呵では勝ちましても、本身の刄先が飛び出したとなりますると、筋書通りに参りますまいかと思いまする」
「いや、そうでない。喧嘩とても胆のものじゃ。抜身の二本三本あの度胸ならへし折ろうわい」
「いいえ、やられましてござります……」
そのとき不意でした。突然、不気味に言った声と一緒に、するするとうしろの襖が開くと、降って湧いたかのように、そこへ姿を見せた男がある。血達磨のように全身朱に染って、喘ぎながら手をついているのです。
「ま! 怕い!……」