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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Read 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 240,656 characters · 478 screens
つかつかとまたかえって来ると、叱りつけました。
「豊後、そちも不埓な奴じゃ。その方の申条とは大分違っておるぞ。憎い奴めがッ。ゆけい!」
去りかけて、何となくまだそれではお胸のもやもやが晴れなかったとみえるのです。
「治右も不埓じゃ。お紋も不埓じゃ。いや、紋は可愛い。憎いは膝じゃ。たわけものたちめがッ。御意見代りに大切な膝借りるというたわけがあるかッ。貸すというても遠慮するが当りまえじゃ。三河流儀の旗本どもは骨が硬うて困る。お紋の膝だけは爾後遠慮するよう気をつけい。五位、行くぞ。参れ」
犬はお膝がないから、しあわせでした。くるりと巻いた尾をふって、いらだたしげに消えた将軍家のあとから、ちょこちょこと姿を消しました。
主水之介の潔白はついに通ったのです。
豊後のおもては真ッ青でした。
治右の手が廻っているといないとに拘わらず、大目付の役向きあるものが目違いした責は免がれないのです。
憎い奴めがッ、行けい、と御諚は只それだけだったが、取りようによっては黒白の見えぬ奴じゃ、切腹せい、という御上意にも取れないことはない。ましてや豊後も家門は同じ旗本、智恵者の評判の身を顧みたら、おのれの不明が恥ずかしくもなったに違いないのです。