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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Read 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 240,656 characters · 478 screens
おどろいたのも無理はない。軸に書かれた八郎次の孫なる当代大和田十郎次は、旗本も旗本、石高二千八百石を領する小普請頭のちゃきちゃきだったからです。しかも事は今、同じそのお直参八万騎の列につながる同輩の所領地に於て、由々敷も容易ならぬ火蓋を切らんとするに至っては、自ら天下御政道隠し目付御意見番を以て任ずる早乙女主水之介の双の目が、らんらん烱々と異様に冴え渡ったのは当然でした。
「騒ぎは何でござる。どうやら百姓共の容子を見れば、一揆でも起しそうな気勢でござるが、騒ぎのもとは何でござる」
「それがいやはや、さすがの沼田正守、あきれ申したわい。かりにも御領主どのゆえ、悪ざまに言うはちと憚り多いが、それにしても当代十郎次どの、少々あの方がきびしゅうてな」
「きびしいと申すは、年貢の取立てでござるか」
「どう仕って、米や俵の取立てがきびしい位なら、まだ我慢が出来申すというものじゃが、あれじゃ、あれじゃ、目篇でござるわい」
「目篇とは何でござる」
「目篇に力の字じゃ」
「ウッフフ。わッははは! 左様でござるか。助でござるか。助でござるか。助の下は平でござるな」
「左様々々。その助と平がちと度が強すぎてな。