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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Read 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 240,656 characters · 478 screens
さすれば人一倍色好みのきゃつのことじゃ、兄の口からこのようなこと言うのもおかしいが、江戸でもそう沢山はないそちの縹緻ゆえ、きゃつがほっておく筈はない。わるい病が催して何か言い寄って参らば、そこがそちの働きどころじゃ。近寄らず近寄らせず巧みにあしらって懲しめてやるのよ」
「ま! 恐ろしい! ……でも、でも仕損じて、もしも身にけがらわしい危険が迫りましたら……」
「死ね!」
「えッ!」
「いや、恥ずかしめられなば死ぬ覚悟で参れと申すのじゃ。役者はそちひとりじゃが、うしろ楯にはこの兄がおる。京弥もついておる。それからここにお在での風変りなおじい様も控えておられる。そちと一緒に兄達三人も庭先に忍び入り、事急と相成らば合図次第押し入って、充分に危険は救うてつかわすゆえ、その事ならば心配無用じゃ。よいか、今申した通り、きゃつめがいろいろと淫がましゅう言い寄って参るに相違ないゆえ、風情ありげに持ちかけて、きゃつを坊主にせい」
「坊主※(疑問符感嘆符、1-8-77) なんのためにござります。何の必要がござりまして、御出家にするのでござります」
「それはあとで相分る。わざわざそちを呼び招いたのも、つまりは、やつの頭をクリクリ坊主にさせたいからじゃ。