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はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Read 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 240,656 characters · 478 screens
「のう菊、お前にちと叱られるかも知れぬが、京弥に少々用があるゆえ、この兄が二三日借用致すぞ」
「ま! 何かと言えばそのような御冗談ばっかりおっしゃいまして、あまりお冷やかしなさりましたら、いっそもうわたしは知りませぬ」
「なぞと陰にこもったことを申して、その実少し妬いているようじゃが、煮て喰いも焼いて喰いもせぬゆえ、大丈夫じゃ。では、借用するぞ」
愛撫のこもった冗談口を叩いていましたが、やにわと京弥に言いました。
「今朝ほど、腕が鳴ってならぬとか申していたゆえ、望みにまかせて、腕ならしさせてつかわそうぞ。早速菊路にも手伝うて貰うて、女装して参れ」
「でも、あの、わたくしの腕が鳴ると申しましたのは、女子なぞになりたいからではござりませぬ」
「おろかよ喃。百化け十吉をおびきよせる囮になるのじゃ。そちの姿顔なら女子に化けても水際立って美しい筈じゃ。どこでいつ十吉に見染められるかは存ぜぬが、この退屈男が毒殺されたと噂をきかば、今宵になりとみめよき婦女子を浚いに出かけるは必定ゆえ、海老で鯛を釣ってやるのよ」
「そうでござりましたか。よく分ってでござります。ではお菊どの、御造作ながら御手伝い下さりませ」