Read classic Japanese books with furigana
ja-reading.com
Read classic Japanese books online with furigana. Filter by JLPT level, tap a word for the meaning, and translate a sentence.
はたもとたいくつおとこ
旗本退屈男
佐々木 味津三
Read 旗本退屈男 (はたもとたいくつおとこ) by 佐々木 味津三 (ささきみつぞう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 240,656 characters · 478 screens
威嚇しながら、同じくすいすいと歩み近よったかと思われましたが、同時に大喝!
「馬鹿者ッ。今、御番所へ土産に持たしてやるゆえ、暫くここで休息せい!」
峯を返しながら、急所の脳天を軽く打っておいて、莞爾と打ち笑いながら、うしろに控えていた真槍隊に言い呼ばわりました。
「江戸旗本は、斬ると言うたら必ず斬るぞ。主君の馬前に役立てなければならぬ命を、無用な意地立てで粗末に致すつもりかッ。逃ぐる者は追わぬ。逃げたくば今のうちに早う逃げえいッ」
「………」
いずれもやや暫し無言でしたが、退屈男の冷厳な訓戒と、その眉間傷の何にもまさる威嚇におじ毛立ったか、じり、じりと、どこからとなく槍の林が、うしろに逃げ足立ったかとみるまに、ばらばらと隊形が総崩れとなりました。
しかし、それと知った一瞬!
「余の者は逃がしてつかわすが、その方だけは退屈男の武道が許せぬわ」
痛烈に叫びざま、黒住団七のあとに追い近づいたかと思われましたが、およそ団七こそは武人の風上にもおけぬ奴でした。笑止や武士には第一の恥辱たる後傷をだッとその背に浴びて、声もなくどったりとそこにうっ伏しました。
――ほっと息をついて、退屈男はやや暫し黙然。